藍の歴史や技術にまつわる多くの情報を次世代に繋ぎたいと、昭和62年(1987)徳島に来ました。
徳島県は藩政時代から藍の主産地としてその名を知られ、明治になってもさらに生産を拡大しました。江戸末期の作付面積は6000~7000ha前後で、明治20年には12238ha、36年の15099haを最高に、大正3年には輸入品のインド藍、合成藍によって2775haになりました。その後の戦争で合成藍の輸入が途絶えたことで増えることもありましたが、日本でも合成藍の製造が行われ、生活が落着き経済成長が始る昭和40年には4haまで減ることになります。
藍の存続を願う人たちの活動によって、昭和62年には20haに、その後25ha前後まで増加しました。それが近年急速に減少し平成25年には15haほどの栽培になっています。
藍は遥か昔、大陸から人々の手で日本に渡ってきて、江戸時代には私が染めているような通年をとおした藍染の技術が完成されました。色の素晴らしさにも魅せられましたが、とても長い時間をかけて日本人の勤勉さと繊細な心が、独自の染色方法を確立して日本の青色を生み出しました。私は技術と思索の積み重ねによって生まれた藍の文化が日本に残っていたことに心がときめき、驚いたことを今でも思い出します。
これまで阿波藍のことを長く調べてきましたが、それは日本の藍の歴史でもあります。もっと多くの人たちとこれからの藍の定義を共有したいと思います。日本列島に存続し続けた藍の物語を掘り起し、集う空間と残すべき情報を考察していきたいと思います。
森くみ子
2024.7.20-10.14
久留米市美術館で開催される展覧会「藍のものがたり」のお知らせ
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2024年7月20日[土]ー10月14日[月・祝]
10:00-17:00 (入館は16:30まで)
月曜休館
場所 久留米市美術館2階
福岡県久留米市野中町1015
Tel. 0942 39 1131
詳しくはHP→こちらから
7.15-9.3 富岡市立美術博物館で開催される展覧会のお知らせ
◆ ゆかたと藍の世界 ◆
私の作品も着物1点、藍のハンカチ14色が展示されます。
会期:2023年7月15日(土)~9月3日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入室は閉館30分前まで)
会場:富岡市立美術博物館・企画展示室
企画協力:株式会社イデッフ
長い間日本の庶民の衣料はほとんど全て麻•苧麻などの靭皮繊維でしたが、棉作が全国的に普及され近畿地方での大量生産システムが整うと、紺屋も全国津々浦々に出現し藍も各地で栽培されるようになります。
多くの庶民によって木綿の需要が増えると、阿波藍の生産も多くなり大坂•江戸の市場だけではなく、全国各地に藍商人が活発に商業活動を始めます。藍商人の活動の軌跡の多くは埋もれたままですが、全国にその存在の跡は残っています。
藍商人たちの経済動向は研究者には知られていますが、各々の藍商人たちが全国各地で活動した記録や、郷土史家が抜粋した資料から独創的な開拓精神を紹介をしたいと思います。
⓫播磨屋 松浦九兵衛
⓬石原六郎 加賀屋
⓭近藤嘉源太⓮木内兵右衛門
⓯伊丹屋勝蔵⓰大串龍太郎
⓱野上屋儀兵衛 天野屋
藍 藍+草木の色彩名称
色相や調子によって微妙な違いを染色するのに藍は使用されました。瑠璃紺、紺桔梗、花色、藍鼠など青味の色、蘇芳や茜と藍を用いて紫や紅と同じような色相の染色方法も創案しました。
⓴藍鼠•湊鼠㉑檳榔子染•黒色㉒苗色•柳色㉓柳染•裏柳•柳煤竹•柳茶•柳鼠
㉔藤色•藤紫•紅藤 ㉕千歳茶•千歳緑
㉖桔梗色•紺桔梗•紅桔梗
㉗銀鼠•素鼠•藤鼠•葡萄鼠
展覧会 1990–2018 28年間のアーカイブです。
展覧会をとおして長い時代愛され続けた藍の可能性を、再び求められるように発信しています。自然に付加をかけない藍の素晴らしさを多くの人に知っていただけるように、未来に纏う布を創作しています。
展覧会のお知らせ。
2018.10.5–20 展覧会を開催します。→終了
縹藍紺JAPAN BLUE 2018
第9回森くみ子展ー深遠なる蒼い時間ー
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ギャラリー新居東京
これまでの展覧会の案内状 1990–2018
展覧会をとおして長い時代愛され続けた藍の可能性を、再び求められるように発信しています。自然に付加をかけない藍の素晴らしさを多くの人に知っていただけるように、未来に纏う布を創作しています。
2018年10月8日に『阿波藍のはなし』-藍を通して見る日本史- を自費出版することができました。蓼藍の原産地は温暖な東南アジアや中国南部といわれていますが、温帯地域の日本で染法が根付く筋道など、調べたいことが尽きることはありませんでした。阿波において600年という永い間、藍を独占することができた理由が知りたい、と考え藍の周辺の歴史や染織技術・文化を調べはじめた資料の纏め集です。
文:森くみ子 写真:伊藤洋一郎 森くみ子
発行所:自由工房
サイズ B5 132頁 左綴じ
価格 3,300円(税込)
表紙 あさぎ版 or しろ版(内容は同じです
世界各地にさまざまな青色を染める植物があって、遥か遠い昔から人類に利用されてきました。地球上のそれぞれの地域で、2000年以上にも渡って青の歴史は創られました。
15世紀後期インド洋航路が発見されてから、ヨーロッパの列強国によってそれまでの多文化が大きく壊滅されていきます。
日本では徳島県(阿波)だけが長い間藍を独占し続けてきました。文献資料「兵庫北関入舩納帳」の関銭徴収台帳のなかに、阿波から最大消費地京都へ藍を輸出していた記載が残されています。阿波一国が、藍栽培と青色染料貿易を明治時代までおよそ500年独占してきたことを多くの人は知りません。世界中の多くの民族が藍染料の化学、染織技術、交易活動、イデオロギーの表現、美学的追求など独自の文化を創り出しました。
徳島へ移住してから出会った伊藤洋一郎と16年間共に活動していました。写真の撮り方を習い、文書を書いて伝える大切さも自由という言葉の重さも教わりました。自由に生き方を選べなかった時代を生き、運よく命を繋ぐことができた敗戦後でも生きずらい環境に抗い、自由に生き続けようと努力した人です。
私の藍染表現の全てに、伊藤の影響があります。”伊藤洋一郎生誕100年記念展”の実現を夢に力を注いでいきたいと思います。