伊藤洋一郎の理《RI》絵画⇔写真 vol.004

19世紀のアメリカで白人の「文明」の前に無力だったインディアンは、相次ぐ弾圧によって西部の不毛な地帯へ追いつめられていった。北西海岸領域の部族の酋長シアトルが第14代大統領フランクリン・ピアスに宛てた書簡は、人間を取りまく、そして人間が共に生きなければならない自然を語って感動的である。かつてこれほど美しい心に沁みる言葉を知らない。満々と水をたたえた落日の吉野川を前にして、書簡の一節が頭からはなれなかった。

―空や土地の暖かさを売ったり買ったりできるのか、その考えは私たちにはなじまない。新鮮な空気、水の輝きを所有してはいないのだから、あなた方も買うことはできない。―

―川は兄弟で、のどの渇きを癒してくれる。川はカヌーを動かし、子供たちに食料を与える。この土地を買うのならば、川は兄弟なのだから、自分の兄弟に対するときのやさしさで応じるのだと、あなた方は子供たちに教えなければならない。―

   ”シアトル酋長の書簡” Switch 所蔵 訳・荒このみ 『自由工房』1990 1 JULY p19-21「吉野川」川は兄弟なのだから