深淵なる蒼い時間
伊藤洋一郎(1929-2004)
徳島県徳島市に生まれる。
旧制中学を中退して陸軍航空隊へ。特攻隊要員として中国大陸で終戦を迎える。
以来徒党を組まないことと、定着しないことを心掛けて生きている。エゴイスティックな雑誌「自由工房」の編集長という役柄は、とても気に入っている。
―1993.1 執筆時の自己紹介―
作品には、或る年令に達した者にしか表現し得ない「何か」が存在し、見る者を圧倒する。油彩を下地にその上にクレパス、オイルパステルを塗り重ね、それを削り又塗り重ねていく。その行為を繰り返す中に伊藤洋一郎の「物語」が誕生する。掲載写真ではお伝えしきれないのが残念であるが、静けさと熱を帯びた作品である。
― 大岩紀子 ―
vol.005
vol.007
vol.009
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伊藤洋一郎と出逢って間もなく話したことは、十七才のとき中国大陸で終戦を迎え、南京での捕虜収容所のことだった。わたしは父との確執から異常なほど戦前、戦中、戦後のことに関心をよせて本を読んだり、映画を見たり、人に話を訊いていた。そのとき訊いた話は思いがけないことが多かった。親しくなってからの印象は、戦前の教育を受け戦場を体験した人とは思えない姿だ。ひとつだけ日常で感じられたのは、毎晩机の上を整理し、着たものをきちんと畳み就寝することだった。七十才を過ぎたころから、日記を書き出し、それからこの手記を書きはじめた。どれほど、重く、心のなかで発酵していたのだろうか。
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