昭 和25年(1950)に制定された文化財保護法によって、30年(1955)に正藍染が指定されてから「正藍染」の表記が藍染製品に多く使われるようになります。重要無形文化財千葉あやのによる藍染の技術を指した言葉でもあるのですが、他の藍染にも自ら「正藍染」を使い合成藍を使った藍染との区別をしたことからです。「正藍染」「本藍染」と偽装表記してもなにも罰則はないことから、明らかに天然藍で染めていないものにも使用がはじまり、本来の意味を保証できるものではなくなりました。
今度は阿波藍の存続を願う人たちによって、「天然藍灰汁醗酵建」「灰汁醗酵建正藍染」「阿波藍灰汁醗酵建」などとより具体的に「正藍染」「本藍染」との区別がはじまりました。根本的に天然染料と合成染料を区別して表記する規制は存在しません。狭い範囲で自分たちが本来の藍染をしている製品名だと訴えても、消費者には何も伝わらないし却って無関心になってしまいます。なぜ関係者が藍製造の生産を存続・支援するため、消費者に応援していただけるように適正な品質表示が進まなかったのでしょうか。
農作物では畳表が「農林物質の規格および品質表示の適正化に関する法律」で日本農林規格(JAS)によって規格されています。繊維、染料の規格は日本工業規格(JIS)により繊維の種類とか染料の堅牢度は表示されていますが、近代の技術に対しての対処です。最近ではオーガニックコットンがJASにより繊維は対象外とされたことより、特定非営利活動法人 日本オーガニックコットン協会(JOCA)、日本オーガニック流通機構(NOC)で独自に認証制度を設け定義をして消費者に伝えています。
オーガニックコットンのように世界各地から輸入される製品でも、大変困難な適正表示をしようと試みられています。国内生産の藍が定義をしないまま情報が一人歩きしないように、長い歴史をもつ徳島県の関係者には大きな視点をもつ必要があると思います。栽培面積が平成26年14.8haにまで減少しています。19年全国藍栽培面積は徳島が17.9ha、北海道5.0ha、兵庫1.1ha、青森0.7ha、宮崎0.1ha、沖縄5.9haですが、最近いろいろな地域で藍栽培をはじめ蒅をつくるところが増えています。これからの藍染の定義を深めるためにも、藍のネットワークができることを望みます。